絵画館壁画Best3
西洋画1位
第五十一図 憲法発布式 和田英作
哀愁を帯びた独特の諧調を持つ赤色がきわめて印象的。和田の代表作はすべて夕暮れを描いたものなので、私は密かに「夕暮れの画家」と呼んでいました。本作は夕暮れではありませんがが、主調色はニュアンスに富んだ赤色。憲法発布式という厳かな式典が、まるで舞台の一画面のような華やかな雰囲気に描かれています。焼失してしまいましたが、和田は帝国劇場の天井画や東京駅壁画、舞台美術など手掛けていました。
あの黒田清輝をして『大概の人は、色に秀でた人は形に欠点があり、形の甘い人は色が拙いというのが多いのであるが、それが双方優れているから珍しい』と言わしめた実力の持ち主でしたが、現在は、黒田の後ろに控える画家として、なかなかトップライトが当たらない画家の隠れた名作です。
西洋画2位
第七十図 日露役奉天戦 鹿子木孟郎
今にも、馬に乗った人物が画面から出てきて話しかけてくるようなリアルな表現の描写力は、80枚の壁画の中でもダントツ。
明治後半の西洋画は、黒田清輝によって外光派という新潮流が中心でした。だから、同時期に伝統絵画を学んでパリから戻った鹿子木は一周遅れのランナー、傍系の画家に甘んじざるをえませんでした。この絵は、鹿子木が伝統の西洋画を日本に残した稀な画家でもあったことを証言しています。
肖像画か、風景の水彩画小品以外なかなか見る機会のない画家。本場仕込みの歴史画をマスターした大作に出会うのは極めて稀といってよいでしょう。
西洋画3位
第四十五図 軍人勅諭下賜 寺崎武男
「神宮和紙」に、壁画の中では唯一のテンペラ技法で描かれた作品。
寺崎武男の名は、今では美術史の中で探すことは難しい、いわば幻の画家です。しかし、1967年没後の回顧展に寄せた推薦文の中で、三島由紀夫は、遺作のヴェネチアの風景画「ラ・トスカ」を自宅の壁に飾っていると書いています。長いイタリアでの西洋絵画研究の実績を買われて、絵画館設立準備のためにヨーロッパの壁画の調査を任された寺崎。永遠に残る壁画を、モノとしても、質の面からも追求し、尽力した画家でした。
画面上部半分を、形のない空間とする斬新な構図。よく見ると、寺崎の濃密なストロークの痕跡があります。まるで、エネルギーが満ちているかのように、不思議な力が漲っています。幻での画家というより、見えざるものを描いた幻視の画家、というべきなのかもしれません。
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